コレクション風景の交響楽(シンフォニー)

風景の競演

故郷へのまなざし 日本という風景 オランダの隆盛 フランス イギリス

自らの故郷を描く、というのは、自画像を描くのに似ているかもしれない。時に美化し、賛美するが、時には凝視し、抉り出し、突き放しもする。
何かを描くためには、どうしても一歩後ろに下がり、目を走らせる広がりが必要である。画家が故郷を描くなら、そこには居ながらにして故郷を離れた旅人の憂いがあるかもしれない。たとえ身体に染み込んだ故郷の水が、筆先から自ずとにじみ出るような絵であったとしても。
私たちはそこに洋の東西を越えた郷愁を感じ、胸の奥底に降り積もったものの間から、小さな泉が澄んでいるのを見出すのであろう。
このパートでは、画家たちが見た故郷の風景をご覧いただくことにしよう。

キラリと輝く金の葉脈、洒脱な水墨画

酒井抱一 《月夜楓図》

春の夕のおぼろげな空気、季節の情趣たっぷりに。

歌川広重 《墨田川春景図》

雨の香りただよう名品—抒情味あふれる「光線画」

小林清親 《東京新大橋雨中図》

繊細な光の祝福に包まれる

入江波光 《草園の朝》

山の清浄な生気滴る

村上華岳 《春峰晴煙図》

ありふれた風景の魅力

川合玉堂

池面が映す壮大な時間と空間

徳岡神泉 《雨》

何気ない素材が絵になる

福田平八郎 《雪庭》

春の雪って、たしかにこんな感じ

小絲源太郎 《春雪》

でんとした山の大きさ

児島善三郎 《箱根》

時雨そぼ降る古色蒼然の村

須田国太郎 《筆石村》

画面に宿る光

岡鹿之助 《観測所》

旅の街道、茶屋でのワンシーン

吉田博 《篭坂》

登山家が見た日本のアルプス

吉田博 《上高地の春》

欧米人が高く評価した日本の水彩画

中川八郎 《松原》

水彩画の技、冴える

浅井忠 《雲》

堅固な構成と優雅な色彩。大家の貫祿を示す名品。

鹿子木孟郎 《紀州勝浦》

貧困の中で描かれた入魂の大作

アールト・ファン・デル・ネール 《森の風景》

オランダを描く基本:層をなす雲、水、そして風車

ヤン・ファン・ホイエン 《レーネン,ライン河越しの眺め》

モノクロームが捕らえた広大な宇宙

レンブラント・ファン・レイン 《三本の木》

白黒で表現した、時の移ろい・穏やかな光景

アドリアーン・ファン・オスターデ 《釣り人たち》

淡々とした日常。画面ににじみ出る自然への愛情。

カミーユ・ピサロ 《ライ麦畑、グラット=コックの丘、ポントワーズ》

さわやかな港の風景に印象派の清新な息吹が重なる

クロード・モネ 《ルーアンのセーヌ川》

近代人ゴーギャンによる牧歌的風景画の再解釈。

ポール・ゴーギャン 《家畜番の少女》

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