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筆者 不詳
Artist Unknown




 
曽我物語 富士巻狩・仇討図(左隻) 曽我物語 富士巻狩・仇討図(右隻)
 

曽我物語 富士巻狩・仇討図

17世紀中期(江戸初期)
紙本金地着色 六曲一双屏風 
(各)156.8×356.6cm
昭和58年度購入

曽我兄弟十郎祐成と五郎時致の物語---『曽我物語』---は、主人公の若いふたりの兄弟の短く悲劇的な生涯が人々の共感をよび、中世の成立以来近世を通じて広く愛好され、親しまれてきた説話文学であるが、近世以降は又、絵画においても、数多くの作品をうみ出してきた。本屏風もその一例である。
すなわち本屏風は、右隻に富士の巻狩の場面を、左隻に祐経の陣屋での仇討の場面を描いている。又いずれの隻にも、独特の粘着質な性格を示す金箔地と、部分的に用いられている揉み箔によってしつらえられた黄金の舞台に、様々な所作をする、色鮮かな装束の人物達が綿密に描き込まれており、私達(鑑賞者)はその光景を更に高い金雲の上から見おろすと言う、「俯瞰構図」の画面が展開している。
こうした金地や人物・自然の景物などの種々のモティーフの描写により、本屏風は、およそ寛永後期から寛文に至る時代---17世紀中期---の、大和絵系の町絵師の制作にかかる作品と考えられている。
又本屏風の特色として、通常の曽我物語図屏風の場合と異なり、右隻の「富士巻狩図」中にあるべき富士の描写を、左隻の「仇討図」の冒頭部に配していることがあげられるが、これは、件の建久4年5月28日と言う歴史的な一日を、富士を軸として、右隻に昼---巻狩---を、左隻に夜---仇討---と言うかたちで明確に連続させ、曽我兄弟の物語を、よりダイナミックに表現していることを意味している。
以上の点で本屏風は、その「歴史画」としての叙事性に加えて、「説話画」としての時間表現の特異性の上で、注目すべき作品である。 (Tm)                           


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